著者
松田 幸子
出版者
上田女子短期大学
雑誌
紀要 (ISSN:09114238)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.A1-A10, 2003

ヘッセの『ガラス玉遊戯』の舞台は二十四世紀のヨーロッパのカスターリエン州である。ここはガラス玉遊戯を教えることを通して、人間の最も晴れやかな精神性を育てる目的を持っている。その州の中にある教団の人々は精神と真理に自分を捧げるという義務があって、物質的な生活には責任がないのである。そのような世界で理想的に育った主人公は、やがてその世界で最高の位にまで昇りつめたのである。しかし、彼は自分たちの物質的な生活を支えるのは、一般的世俗の世界の人々であることに気づく。やがて主人公はその位から自分で身を引き、カスターリエンという精神的世界と世俗の世界との融合をはかる目的で、世俗世界の中で家庭教師となるのである。主人公が一段一段と踏み越え自分本来の道に進んで行く過程には、美しい師弟愛が見られる。そこにはヘッセの理想的な教師像が示されていると考えられる。

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