- 著者
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菅原 黎明
- 出版者
- 社団法人日本リハビリテーション医学会
- 雑誌
- リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.41-53, 1974
- 被引用文献数
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肩運動は大きな運動域をもつが,これは肩関節と肩甲骨と鎖骨の総合された動きによりもたらされる.古来より肩運動に関与するrotator cuff musclesを始め多くの関与筋群の活動動態は検索されて来た.しかしながら肩運動は多様にして複雑なために今まで十分な解明はなされていない.この様な観点に立脚してrotator cuff musclesを始め肩運動に関与する筋群の活動動態を筋電図を用いて分析した.<br>健康男子9名の利き肩を用い,主として立位における前方挙上,後方挙上,外方挙上,内方挙上,外旋および内旋の各運動を行なわせた.被検筋は棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋,大円筋,三角筋各部,大胸筋鎖骨部および胸骨部,小胸筋,上腕二頭筋長頭および短頭,上腕三頭筋長頭,広背筋,烏口腕筋,僧帽筋各部,大および小菱形筋,前鋸筋および肩甲挙筋の各筋である.電極はpolyurethane coatingしてある直径0.07mm.の銅線をfine wire electrodeとして用いた.8チャンネル筋電計を用い,得られた筋電図と関節運動は2現象同時撮影装置により16mm.映画フィルム上に同時記録した.このフィルムはFilm motion analyzerを用いて定性分析された.<br>結果<br>1) rotator cuff musclesはすべての筋が常時moverあるいはsynergistとして関与するのではなく関節運動の方向によりそれぞれ特定の筋群が適時作動すると思われる.<br>2) 三角筋鎖骨部,大胸筋,広背筋,烏口腕筋においては内旋作用は認められなかった.また肩甲下筋は特別な負荷を加えない内旋時において唯一の活動筋である.<br>3) 棘下筋と小円筋は外旋時に重要な機能を有するが,三角筋肩甲棘部にはこの作用は認められなかった.<br>4) 小円筋と棘下筋との間には若干の機能的な差異がある.すなわち小円筋は外方挙上の後半と内方挙上時に関与するが,棘下筋は外方挙上に関与するが内方挙上時には関与しなかった.<br>5) 大円筋と広背筋との間には若干の機能的な差異がある.すなわち大円筋は後方挙上と内方挙上時に働くが広背筋は前方挙上,後方挙上,外方挙上,内方挙上時に働く.<br>6) 関与筋群の活動動態に若干の経時的差異を認めた.