- 著者
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冨永 靖徳
- 出版者
- 一般社団法人日本物理学会
- 雑誌
- 日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.10, pp.773-780, 1993-10-05
- 被引用文献数
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2
水は,地球の環境にとっても,生命にとっても極めて大切な物質でありながら,なかなか正面から取り上げにくい物質である.それは,あまりにも身近過ぎる物質であることに加えて,多くの先達が優れた成果とともに,尤もらしい俗説や魅惑的な誤りを,とりまぜて残してきたためである.しかし,液体の水が単純なH_2O分子でないことは,誰もが認めるところであり,水が我々に対してもつ重要性は今も変わらない.そこで,なんとか水のみせる素顔の一面を分光学の手段で覗くことができないものかと考えた.液体の水が,短い時間では,ある種の構造をとっていることを示し,またその構造の変化が,生理作用にかかわる,情報の鋳型になっている可能性をさぐるのが本稿のねらいである.