著者
桜井 博
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.1213-1221, 1967-10-01

最近リンパ系造影法に対する関心が高まり,各方面で活発な研究がなされているが,その読影,副作用,手術前後経過等についての一連の研究は少なく未知の分野が多い.私は教室における婦人性器悪性腫瘍に関する研究の一環として,対照6例を含む64例に計66回の直接的リンパ系造影法と264回の撮影を施行し,その副作用,組織変化及び術前術後診断の関連性等について検討を行なつた.その概要は次の如くである. i)本法実施後の問題となる直接的副作用は37.5℃以上の発熱で,53.1%にみられた.ii)胸管出現した37.5℃以上の発熱群には全例に胸部微細陰影を認め,発熱原因は胸部の微細な油性栓塞であると推定された.iii)対照群のリンパ節造影数は閉鎖節の他はほぼレ線によるリンパ節解剖学に関する成書に記載されている所見と一致した.iv)造影リンパ節数は左側より右側に多く,年令と子宮頚癌の進行期とに関係が認められた.v)リンパ節転移確診例数については,術前レ線診断が組織学的最終診断に最も近い数を示し,確診例数は転移初期像より転移末期像に多かつた.vi)反復リンパ系造影像は初回造影伝と異なり,リンパ管遺残やリンパ節の淡い陰影欠損の傾向が認められた.vii)本法はリンパ系組織を障害し,リンパ節本来の組織像を失わしめるので,生活現象の適応に影響を与えるものと考えられる.なお,読影基準表を作成し,これより直接的リンパ系造影法による進行期別のレ線像を読影し,造影リンパ節数,摘出リンパ節数を算出した報告は本邦において初めてと考える.

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