著者
加藤 和暢
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.319-328, 1994-12-31

経済活動の「グローバル化」と「サービス化」を軸とした社会経済環境のドラスティックな変貌は, 地域構造論にも重大な反省をせまっている. その場合の論点として指摘すべきは以下の2点であろう. まず第1は「グローバル化」の進展にともなって, これまで地域構造論が自明の前提としてきた国民経済の「全体性」を再検討する必要がでてきたことである. つぎに第2として「サービス化」の進展により, 貯蔵も輸送も可能であった「モノ」づくりの特性を反映したこれまでの地域構造の編成論理が変化しつつある点があげられよう. これらの問題をかんがえるうえでの手がかりとなるのが, 地域構造論においても重視されている「経済循環の地域的完結性」という議論にほかならない. 経済循環の「完結性」を基準に地域(経済)を把握することにたいしては, かねてから批判があった. また, 地域構造論の全体的な論理構成とも, それは矛盾しているようにおもわれる. 小稿では, 経済地理学にたいする地域構造論の重要な貢献を「経済循環」という経済学の基本的な議論との接点を明確にした点にもとめ, それを発展させることで「グローバル化」や「サービス化」のながれに対応した枠組が構想可能な点をしめした. それが小稿にいう経済循環の「空間的分岐」として地域(経済)を把握する視点である.

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