著者
安東 誠一
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.p1-9, 1991-03

多国籍化する企業行動が引き起こす経済のグローバル化は,世界大に広がる「大都市-地方」関係をつくり上げつつある.また経済のソフト化は,間接部門の雇用を肥大させ,需要の地域的分布を大きく変えつつある.両者の動きが合わさって,日本国内では東京一極集中と新たに周辺化する機能の分散(オーバーフロー)が展開され,地域構造の再編が進んでいる. 日本経済の回復-拡大の過程においても,外部に成長の要素を依存した地域経済の量的な側面での維持・成長のメカニズム-「発展なき成長」のメカニズムが依然として持続している. 地域振興政策は,こうした経済のグローバル化・ソフト化の下にさらにいっそうの地域の縁辺化が進む中で,地域の環境変化に対する主体的な対応の中からつくり出されてくる新たな潜在的可能性(ポテンシャル)に働きかける政策が基軸にならねばならない.しかし,現行の地域政策は,広域経済圏構想をはじめ,都市集積の自己成長力への期待が目立ち,小規模な地域経済の可能性を閉じる方向にある. 地域構造の再編の新たな動きを,地方経済の安定化,自立的発展の方向へ制御していくためには,マクロ的,ミクロ的アプローチの片方だけでは不十分で,この2つのタイプ,すなわちマクロ的視点からの地域間資源再配分政策と個々の地域からの主体的な地域づくりへの支援政策の相互作用を意識的につくり出すことが不可欠である.こうした2つのタイプの政策を有効に組合せつつ推し進めるためには,次のことについて議論が深められねばならない.つまり諸政策を通した地域間所得再分配の実態とその効果の解明であり,経済単位としての地域(自治体)のあり方あるいは地域経営のあり方の追求である.

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