著者
加藤 幸治
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.318-339, 1993
被引用文献数
3

本稿の目的は, 仙台市を事例として, 地方中枢都市におけるソフトウェア産業について, とくに事業所の性格・取引構造に注目し, 当該地域における展開と機能的特徴を, 実態に即して明らかにすることである. ソフトウェア産業の地方展開, なかでも地方中枢都市でのそれは, 域内の産業の「高度化」につながるとともに, 経済的中枢管理機能の分散の前提とみられている高次サービス機能の集積を促進するものであるとして, 政策立案者などの視点からは積極的な評価をあたえられていた. しかし, 今回対象とした仙台におけるソフトウェア産業の実態は, そうした「期待」を裏付けるものとはいいがたい. その取引構造の特質をみる限り, 仙台のソフトウェア産業はもともと受託計算の割合が高く, 後進的で, 技術的には低位にあり, 周辺的性格が強かった. 加えて, 80年代のソフトウェア産業におけるソフトウェア開発中心へという構造変化によって事業所の地方展開が促進されたことで, 周辺性は再編・強化された. 仙台のソフトウェア産業は,依然として, 技術的に低位にあって, 低次部門を担っているだけではなく, 東京資本の進出にともない「域外支配」が強化され, また東京からのコストダウン, リスク分散を目的とした外注利用の増加により, 下請として従属的性格を強めている. 東京一極集中構造の是正, 多極分散型国土の形成・促進の役割を果たすと期待されているソフトウェア産業の地域的展開ではあるが, 仙台市におけるその「成長」をみる限り, そうした「成長」も, 実際には, 企業内地域間分業の下に枠づけられたもので, 既存の地域構造, 地域間関係の下に組み込まれ, その再生産・強化に寄与している側面が強い.

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