- 著者
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古崎 睦
- 出版者
- 公益社団法人日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.9, pp.829-834, 1999-09-05
- 被引用文献数
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ホタテ貝の中腸せん(腺)(ウロ)を焼却処理すると, 含有重金属の中で比較的低沸点のカドミウムは一部気化すると考えられる. そこで, ウロを焼却したときの(1)焼却残留物, (2)焼却管壁析出物, (3)焼却飛灰, 及び(4)排ガス吸収液中の鉄, 銅, 亜鉛, カドミウムの量を調べ, 焼却過程におけるこれらの物質収支を検討した. 湿ウロは1kg当たり平均約20mgのカドミウムを含んでいるが, これを空気中900℃ で加熱するとその約57%が気化した. 気化したカドミウムの多くは焼却管壁に析出するが, 飛灰からも16%程度回収された. 一方, 窒素中で加熱した場合の残存率は10%程度で, 管壁から約88%, 飛灰から6.0%, 吸収液から1.8%のカドミウムが検出された. カドミウム金属を同条件で加熱した場合には, 空気中では酸化のみが進行し, 窒素中ではほぼ100%が気化した. また, 焼却残留物質量/ウロ質量で表される灰化率が大きいほど, すなわち焼却の進行が不十分であるほどカドミウム気化率が大きくなる傾向が認められた. これらの結果より, ウロを焼却した際のカドミウムの気化は, 有機成分の燃焼時に局所的な酸素不足雰囲気が形成されることによって進行すると考えられる.