- 著者
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青木 伊豆男
渡辺 邦洋
斎藤 隆
- 出版者
- 公益社団法人日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.4, pp.250-255, 1987-04-05
シッフ塩基[N-(アルキル)サリチリデン-1-ブチルアミン]とそのZn及びBe錯体の蛍光及びりん光特性に及ぼすアルキル置換基の効果を検討した.錯体の吸収スペクトルはシッフ塩基の中性分子ではなく,その陰イオンに類似していた.シッフ塩基の中性分子は低温においても蛍光を示さず,陰イオンは室温(296K)では微弱であるが蛍光を示し,低温では強い蛍光を示した.錯体は室温でも強い蛍光を示し,そのスペクトルは77Kにおけるシッフ塩基陰イオンのスペクトルに類似していた.又,錯体は77Kにおいて強いりん光を示すがシッフ塩基陰イオンのりん光性は小さい.錯体の蛍光及びりん光はシッフ塩基イオンが金属イオンに配位することにより固定され,イオンの振動が抑制された結果と考えられる.又,シッフ塩基のフェニル環中のアルキル置換基は鈴体の蛍光及びりん光に大きな影響を及ぼす.アゾメチン基に対して5位のアルキル基はシッフ塩基のπ電子を非局在化させることにより,錯体の蛍光を増大させ,4位のアルキル基は局在化させることにより,りん光を増大させると考えられる.