- 著者
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鈴木 好一
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質學雜誌 (ISSN:00167630)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.578, pp.520-525, 1941-11-20
明治23年北海道廳より出版された「北海道地質略論」中に於て, 故神保小虎教授は石狩國空知炭田の第三紀層産として3種の非海棲貝化石, 即ちPaludina sp., Anodonta sp., 及び Cyrena sp., を圖示して居る。同時に出版された英文の「北海道地質圖説明書」にもこれら3種の名を擧げてあるが, 圖はない。これらの化石の正確な層準及び産地は不幸にして不明であるが, 石狩統中のものであることだけは先ず確であらう。最近東大地質學教室は保存されてゐる Paludina sp., の原標本 2箇及び Anodonta sp., の原標本 1箇を調べて見た所, 前者は Viviparus の1新種, V., jimboi SUZUKI, n., sp., で後者は Margaritifera perdahurica (YOKOYAMA) の1型であることを知った。Cyrena sp., の原標本は未だ見つからないが, 神保教授の圖から判斷すれば恐らくは Corbicula atrata tokudai (YOKOYAMA) の高くて亞三角形を呈する型に屬するものではないかと考へられる。新種 Viviparus jimboiに就ては詳しい記載と比較を本文中に與へておいた。2標本中の1箇に〓の跡が残ってゐるのは興味深いことである。