著者
辺見 秀一
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.983-992, 2004-07-20
被引用文献数
2

胸部CT(computed tomography)画像のアキシャル(横断像)表示は,肺野,胸郭・縦隔,ならびに2種類の背景(スキャンエリア内,スキャンエリア外)で構成され,同一スライス像において(1)肺野優先表示,(2)胸郭・縦隔優先表示,(3)肺野,胸郭・縦隔同時表示の3種類の表示方法が考案されている.このなかで読影診断学的には,通常,(1),(2)の2種類の画像の提供が必要である.この3種類の表示方法を視覚心理学的に「図と地の分節」^<a),2〜4)>の観点から検証すると,(1)肺野優先表示の場合,観察対象である灰色の肺野を白い胸郭・縦隔で囲み,その周囲を灰色(スキャンエリア内)と黒(スキャンエリア外)の2種類の背景で囲んだ図柄を呈している.この場合,肺野と胸郭・縦隔との間で図と地の分節がおこり,肺野は図として認知されるのに対し,胸郭・縦隔は図というよりはむしろ地として認知されるので,その部分は面色に近づき,図である灰色の肺野のみが定位のはっきりした物体色として知覚される.画像表示条件を変える(ウインド値を上げウインド幅を広げる)と,それまで認識されていなかった白い胸郭・縦隔の部分がうっすらと描写されるが,このとき,徐々に地が図と認知されるようになるであろう.(2)胸郭・縦隔優先表示の場合,観察対象である胸郭・縦隔の内部に黒い肺野があり,胸郭の周囲を黒い1種類の背景で囲んだ図柄を呈している.(3)肺野,胸郭・縦隔同時表示の場合,灰色の肺野をオリジナル画像の胸郭・縦隔で囲み,その周囲を黒い1種類の背景で囲んだ図柄〔実用化されていないのでパーソナルコンピュータ(以下,パソコン)で作成した仮想画像を想定〕を呈している.この場合,肺野と胸郭・縦隔との間で図と地の分節がおこらず,その両者がともに図となり,定位のはっきりした物体色として認知される.このように,胸部CT画像は,肺野を観察する場合と胸郭・縦隔を観察する場合とでは,写真濃度を観察している条件が視覚心理学的に異なっているといえる.さて,頭部CT画像における脳実質写真濃度は物理的写真濃度と心理的写真濃度の二つの側面を持ち,頭蓋骨や背景,図柄の違い(疾患の違い)等の影響で,同化,対比,枠の効果といった錯視現象が生じる^<2〜13)>ために,物理的には同一写真濃度であっても心理的には異なった知覚がなされている^<14,15)>ことが知られている.そこで今回,胸部CT画像の明るさ知覚に関する視覚特性を解明するために,肺野および胸郭・縦隔の写真濃度の見え方(視覚的印象)をシェッフェの一対比較^<16)>の中屋変法^<17)>を用いた視覚的主観評価によって検証し,「枠の効果」^<10)>,「図と地の分節」^<2〜4)>,「グループ化の法則」^<b),8)>といった視覚特性を踏まえたうえで,錯視現象の一つである写真濃度の見え方(視覚的印象)について視覚心理学的見地より考察したので報告する.

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こんな論文どうですか? 胸部CT画像の肺野および胸郭・縦隔の写真濃度に関する視覚的印象 : 視覚的主観評価による錯視現象の検証(辺見 秀一),2004 http://t.co/um3kS88P
こんな論文どうですか? 胸部CT画像の肺野および胸郭・縦隔の写真濃度に関する視覚的印象 : 視覚的主観評価による錯視現象の検証(辺見秀一),2004 http://id.CiNii.jp/OZfdL
こんな論文どうですか? 胸部CT画像の肺野および胸郭・縦隔の写真濃度に関する視覚的印象 : 視覚的主観評価による錯視現象の検証(辺見秀一),2004 http://id.CiNii.jp/OZfdL

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