- 著者
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山下 一也
- 出版者
- 公益社団法人日本放射線技術学会
- 雑誌
- 日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.11, pp.1907-1914, 1994-11-01
- 被引用文献数
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1)私にとって「画像とは何か」を叩き台にし, できるだけ一般的定義に矛盾しない立場で画像を定義した.それを足掛かりに画像の評価法について考えていくことにした. 2)最初に, 画像評価法を一般的な分類にしたがって客観評価と主観評価にわけ, それぞれにこれまでの規定の方法と矛盾しない方向で性格を与えた. 3)とくに主観評価については, 検証を深めるために同じ主観評価法でも基本的に研究の方向と方法を異にする三つの研究例を取り上げ, それぞれに実験と評価法の概要を述べ, その問題点をあげ, 考察を加えた. 4)その結果, 主観評価でも心理量を客観的に定量しなければならないことと, 事前の学習の重要さを言葉を重ねて述べておいた. 5)以上の検証の結果から「視覚の特性」を主体にした新しい主観評価の方法論を提案したい.主観評価は画像における各画質属性を主観的に評価するだけでは, 「知覚-認識系の測度」の二つの面を評価したことにはならない.単純な画質属性と画像を構成している主柱(読影の主眼点)とを合わせて評価することで主観的総合評価が可能になる.このことは, いずれかの評価法だけでは知覚-認識系の全体を評価したことにはならないからである. 6) ROC解析は, すでに一定の市民権を獲得した主観評価のすぐれた手法であるが, 総合評価となるとさらに検討を重ねなければならないと思っている.その点でシカゴ大学のMetzらが開発した「連続確信度法 : method for continuously-distributed test results」に期待したい.この方法における評定基準区分をとくに設けない点に注目し, ここには画像の総合評価への適用が表出されているように私には思える.またこの評価法に限っていえば, 心理的主観的実験に限らず多様な分野への応用, たとえば物理的測度の計測や精度などの確定のための実験にも適用が可能である. 7)また, ファジィ測度とそのファジィ積分による総合評価は, 臨床感覚に即した結果が得られ, 今後の発展が期待できるものと信じている. 8)私がこれまでに行なった象徴的な画像研究を通して, 主観評価のあれこれを系統的に述べ, 主観評価とその総合評価について未熟成ではあるが, 一定の提案をした.すでにいわずもがなの面もないとはいえないが, 画像研究のこれからの発展にいくらかのお役にたてば望外の喜びである.折角の企画をたてられ, 私のために貴重な時間と空間を与えていただいた画像部会の小寺部会長ほか部会役員の方々, 部会会員のみなさんに心からの敬意と感謝を申しあげる.