著者
大井 次三郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.66-87, 1932-04-20
被引用文献数
1

65-66)タカネソモソモは本州中部地方の日本海に近い高山,即ち立山,白馬山,鎗ヶ岳等に生ずるイチゴツナギ類似の高山植物の一種で禾本の専門家HACKEL氏がPoa? nuda HACK.と檢定したのを武田久吉博士が東京植物學雜誌第二十四卷百十二頁に發表せられたのが初めである。私は一昨年北鮮地方を旅行した際同地の高山でもこれに酷似した植物を採集したが,それを材料としてよく研究した所イチゴツナギ屬とは子房及び頴果の上端に毛がある外後者の臍點が線形をしてゐて長い點が一致せず,むしろ習性は多少違ふがウシノケグサ屬に屬すべきものではあるまいかと考へたが此の屬とも護頴の背部が稜をなしてゐる點や一般習性等が異なるので兩屬から切離して新屬を立てゝ新たにLeiopoa OHWIタカネソモソモ屬と呼ぶこととする。朝鮮産のものはタカネソモソモよりも全體が少し大きいのと稈の基部が古い葉鞘で包まれてゐる點違ふので新種として記載しミヤマソモソモと呼ぶ事とする。咸鏡北道の高山帶には可なり廣く分布してゐるらしく,伊藤春夫氏も,昨年同地の南冠帽峯で採集された。67)オホウシノケグサの變種で第二苞〓が大きく最下の護〓と殆んど同長になつてゐるものである。秋田縣師範學校,村松七郎氏の採集でハマオホウシノケグサ Festuca rubra L. var. Muramatsui OHWIとする。 68)ツシマスゲは初めCarex chinensis RETZ.の變種と考へて居たが雌花小穂が一層密花なのと果嚢及嘴部が短かい點が違ふので別種とし,記載のやり直しを行つた。本邦産のものの内ではタシロスゲに最も似てゐるが雌花鱗片の芒が果嚢よりも遙かに長く抽出してゐるので容易に見分けられる。此の植物はまだ對馬以外には知られて居らぬ樣である。 69)同じく九州産のツクシミノボロスゲも支那やヒマラヤ山地に分布するCarex nubigena DON. の變種として1930年に發表したものであるが莖が殆んど平滑なのと葉が偏平なのと果嚢の幅が廣いのとが違ふので別種として改めて記載する。此の植物は又ジャバや支那に分布するCarex fallax STEUD.に似てゐるが葉や穂の長さ,果嚢の形ち等が違ふ。ミノボロスゲにもよく似てゐるが莖が太く殆んど平滑で果嚢が太く厚く鱗片の色が一層淡い,ツクシミノボロスゲはその後九州,南鮮の外更に中國地方まで分布してゐることが判つた。

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