著者
大井 次三郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-36, 1933

112)チシマルリサウ チシマルリサウは碧色の花の美しい海岸植物で南千島の色丹島から得撫島にかけて分布する,その学名は巴里博物館のH.HUMBERT教授の厚意に依ってSteenhammera pterocarpa TURCZ. を改めたMertensia pterocarpa (TURCZ.) TATEWAKI et OHWIと成らねばならぬ事が明らかに成った.従来はMertensia rivularis DC. の変種と考えられていたが此の植物は沿海州産のもので小果の周縁に鋸歯がある別種でHULTEN氏が勘察加植物誌に図解して居る.又著者の一人は誤って色丹植物誌中にMertensia kamtscbatica DC.の名を用いたが此れは北千島から勘察加に分布するタカヲカサウの異名であって小果の形ちは似て居るが全体に多少の絨毛があり,萼列片の形ちも質も少々違う別種である.113)チシマイハブキ 真のSaxifraga panctata LINN. は本邦では朝鮮の北部にのみ産する花序の疎な茎葉に軟毛のある種類であってチシマイハブキにあてるのは正しくない.チシマイハブキは北米北部に生するSaxifraga Nelsoniana DON に最も近似して居るがそれよりも花序が密でないのと葉身や葉柄に密毛の無い点が違う.チシマイハブキは北海道,千島,樺太及び勘察加に分布して居るが本州及び朝鮮では未知のものに属する,従って朝鮮産の真のS. punctata LINN. には和名がなくなるので新しくテフセンイハブキと呼ぶことにする.114)リウキウヒエスゲ 琉球の国頭郡佐手で小泉博士が採取せられたヒエスゲ近似の新種で,本州四国等の南海岸に分布するアヲヒエスゲに酷似して居るものであるが雌花鱗片が卵状三角形で漸尖頭であるのと果〓が平滑で脈が多いのとその肩の部分が急に狭まらぬ点が違う,又果〓の脈が多い点等台湾産のタツタカスゲとも似て居るが果〓が平滑でその側面が膨れて居る事や痩果の頂部に円盤状の付属物がある点が違う.Carex xollifera OHWIと呼ぶ.

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