著者
大井 次三郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.81-87, 1934

168) ヤマイチゴツナギ 本州,四國,及び朝鮮に分布するトボシガラの芒の無くした樣な外形のものであるが此れはその外尚台灣の山地にも産する. 169) シバカモノハシ,ヤエヤマカモノハシ 松村任三氏植物名鑑には Ischaemum muticum LINN. の名が出て居るが本田博士に從へばそれはオニシバに過ぎず眞の此の學名の植物ではない,從つて琉球の此の植物は本邦に於ける初めての記録と成る,他の Ischaemum に比べて隨分違つたもので芒が全くなく,葉が短かくて一見オニシバを少し大形にした樣なものである,吾が近隣地方では比律賓にある. 170) ヒメネヅミノヲ 台灣の新竹州,十八尖山で島田彌市氏が一見ネヅミノラを小形にして穂に赤味を帶びさせた樣な植物を採集せられた,台灣の對岸,福建及び廣東に知られて居た Sporobolus Hancei RENDLE で和名は島田彌市氏がヒメネヅミノヲと名付けられた,本邦のフロラには新品である.171) カニツリグサ 之れも台灣では未記録であつたが同地のピアナン鞍部,太平山等で採集した,ピアナン鞍部ではリシリカニツリと混じて附近の草原に可なり澤山あつた,此のカニツリグサは歐洲産の Trisetum flavescens BEAUV. 及びその變種で本邦北部や中部の山地等にあるチシマガニツリとは明かな別種であつて,容易に出來る區別點としてはカニツリグサでは護頴の先端の二個の裂片が針状に尖る事と葯が楕圓形又は長楕圓形で護頴の長さの1/5-1/6に過ぎぬ(チシマカニツリ及び Trisetum flavescens BEANV. では2/3-2/5.その形ちは線形披針形であるが上部の花のものではそれよりも多少短かい)點等を擧げる事が出來る. 172) イヌフト〓 Scirpus littoralis SCHRAD. の新和名である,琉球本島の産でフト〓に似て痩果の剛毛に比較的長い毛がある,莖は三稜形である.

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