著者
大井 次三郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.51-57, 1936-01-30

216) ヤマスズメノテツポウ 朝鮮咸鏡北道の山地に限つて生育する一種で苞頴背面の毛茸が極短かく最長いものでもその巾の三分一に達せぬので區別が出來る. 217) ラシヤキビ ビロードキビの變種で穎の毛茸が無くなつて平滑に成つたもの,標準種と混生するらしく琉球諸島中の石垣島の産. 218) オホウシノケグサの變種 ヤマオホウシノケグサは本州,の中部地方に生ずる高山型の一種である,アライトサウは變種と思はれるので學名の改變を行ふ此れは千島列島至る所に分布するシラゲオホウシノケグサはアライドサウに似た臺灣の高山性の變種で人によつては種と認められる事もあるであらう,葯の短かいのが決定的な相異點である,同島の南湖大山の産,ニヒタカオホウシノケグサも同島の高山に生ずる一型であるが此れは歐洲産の標準型に近いが葉鞘の模樣,葯の長さを異にする. 219) チイサンタガネサウ 南鮮智異山の産タガネサウに似て全形が小形繊細,葉巾が狹く,色が淡く葉裏は特に白色に近いのが特徴である. 220) ウスイロサツマスゲ 同じく智異山の産サツマスゲに酷似して居て果嚢が踈につき毛が短かく,鱗片の色が淡い種類,初島氏のリストのサツマスゲは此れである. 221) Cares trigonosperma 支那四川省の産,本邦のホンモンジスゲの系統であるが痩果が三角形で殆ど脈がない種類で唐進氏がホンモンジスゲの變種にあてゝ居られるものである. 222) オニヤブラン 沖縄島産の大形のヤブランで葉は厚く巾廣くて長く,花は淡紫色で大形,その小梗が長く,花莖並に花軸は鈍稜がある獨立した良い種類と思はれる,以前から京大の標本室に果實の時期の標本が一枚あつて疑問にして居たが此度同島の多和田眞淳氏から良い標本を頂いたのでそれを Type として記載した,學名は採集者である同氏にちなんだものである. 223) ヒロハノクワラン リウキウエビネに似た種類で南九州の鹿兒島縣の南半,屋久島,種子島,甑島等に稀産する,葉の巾は廣くて基脚は殆んど円形をなし,花は純白,脣辨の基部にある附屬物も形ちが違い距も短かく別種と認めて記載する,屋久島から記載された Calan the Fauriei SCHLTR. は記載だけでは兩者の何れとも判斷し得ないが FAURE 採集の Duplicate type によればそれはリウキウエビネの事である. 224) タガネラン 葉がタガネサウウに一寸似たものであるから左様新名を付けた,エビネの一種ではあるが特殊なもので臺灣には類似のものがあるが内地ではまだ知られて居らない,花はヤマサギサウ位の大きさで數多く長い花莖につき乾燥すると黒變する,苞は長く宿存しどう見てもエビネの類とは思へない程である,九州,豊後國,青井町で小野學氏の採集された稀品で同氏によれば花色は黄緑色である.

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