著者
臼井 健二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-23, 2003-05-31

近年,雑草防除・管理への除草剤の使用は,効率性と省力化をもたらし作物の安定生産に寄与してきている。戦後間もなく導入された2,4-D以来,対象とする作物に安全で雑草を有効に防除する除草剤が多く用いられてきている。この作物-雑草間の除草剤の選択作用性は,高活性,低毒性,非残留性,環境負荷が少ないことなどと共に除草剤に求められる大きな特性の1つとなっている。選択性の主な要因として,土壌・生態的要因および植物の生理生化学的要因があるが,後者の主なものは除草剤の植物体内への吸収,作用部位への移行,作用点の除草剤感受性およびその間の除草剤の代謝があげられている^<10)>。植物体内に吸収された除草剤は様々な反応・代謝を受ける。反応は化学的にも進行するが,多くの場合酵素により触媒される^<21,22,25)>。一般に,脂溶性化合物は,主としてエステラーゼなどによる加水分解,チトクロームP-450などによる酸化,あるいは還元などの反応を受けて極性基が導入され,その極性基を介してグルコースなどの生体成分と抱合される。一方,親電子化合物はグルタチオン転移酵素(GST)により直接グルタチオン(あるいはホモグルタチオン)抱合される。更に抱合化合物は液胞に運搬されたり,細胞壁に取込まれたりし,いわゆる隔離される。一連のこれらの反応は解毒(不活性化)反応であるが,加水分解・酸化等により活性化される場合もある。これらの除草剤解毒代謝酵素は,本来,体内に取り入れた様々な化学物質を生体成分として合成・代謝し利用する一方,侵入した異物。毒物を代謝・解毒し防御するために発達してきたと言われるが,それらが除草剤にも反応していると考えられる。除草剤の代謝は,除草活性に関係するばかりでなく,代謝物を含めた残留性,安全性およびその試験においても重要である。代謝物の同定,経時的および定量的分析に基づく代謝経路の推定により,それらの代謝に関与する酵素も推定される。それ故,植物体内での除草剤の代謝活性の測定には,代謝物を分析する他,酵素活性の測定も有効である。除草剤の選択性が除草剤の種類と植物の解毒代謝活性に依存する場合,除草剤の主要代謝に関与する酵素活性の測定によりその程度を推測できるであろう。本研究では,植物(作物と雑草)における水田用の酸アミド(α-クロロアセトアミド)系除草剤のグルタチオン抱合に関与するGSTおよびスルホニルウレア系除草剤の酸化代謝(O-脱メチル反応)に大きく関与しているP-450を中心に数種除草剤の解毒代謝酵素活性の測定およびアイソザイムの分離等を通じて,選択性および薬害軽減作用への関わり,植物の外界の異物に対する防御の機能・役割を追究した。

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こんな論文どうですか? 植物における数種除草剤の解毒代謝酵素を中心とした生理生化学的研究(学会賞受賞業績)(臼井健二),2003 http://id.CiNii.jp/QnD2L

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