著者
上村 さと美 西田 裕介 大嶽 昇弘
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20

【はじめに】要介護高齢者を介護する介護者の介護に対する負担感は、要介護高齢者の日常生活能力との関係もあるが必ずしもそれだけではない。今回、介護者の介護負担感をZarit介護負担尺度日本語版(以下、ZBI)と、その下位尺度であるPersonal strain(介護を必要とする状況に対する否定的感情の程度を示す介護負担感)及びRole strain(介護によって社会生活に支障をきたしている程度から生じる介護負担感)を用い、介護期間と介護負担感との関係を検討した。<BR>【方法】対象は訪問看護ステーションを利用している中枢神経疾患既往の要介護高齢者22名(男性11名、女性11名、平均年齢79.1歳、要介護度平均3.9)の主介護者22名(男性4名、女性18名、平均年齢63.5歳)であった(続柄は配偶者10名、嫁4名、子供6名、血縁者2名)。介護者に対しZBI、介護期間、介護者の健康状態を質問紙に記し自記式にて調査した。結果をもとにZBIの総得点(合計88点)を算出した。また、ZBIをPersonal strain項目に該当する項目(合計48点)と、Role strain項目に該当する項目(合計24点)に分類し、各々を合計点数で除して介護負担感(%)を算出した。統計学的手法としてはピアソンの相関係数検定を用い有意水準を5%未満とした。また、介護者の健康状態の把握は良好、不良の2択での記載とした。<BR>【結果】平均介護期間は6.0±5.03年、ZBI総得点平均は30.3±14.7点であった。Personal strain該当項目の介護負担感は35.0%(17.0±8.3点)、Role strain該当項目の介護負担感は33.0%(8.0±4.6点)であった。介護期間とZBI総得点(r=0.43)及び介護期間とPersonal strain項目点(r=0.45)においては有意な関係が認められた(p<0.05)。また、Personal strain項目点とRole strain項目点間でも有意な関係が認められた(r=0.74、p<0.05)。介護者の健康状態は良好9名(平均年齢58.2歳、ZBI総得点平均25.5点、平均介護期間3.9年)、不良13名(平均年齢67.1歳、ZBI総得点平均33.6点、平均介護期間7.9年)であった。<BR>【まとめ】介護期間が増すごとに介護負担感総得点及び、Personal strain項目の点数の増大が認められた。また、Personal strain項目とRole strain項目間においても有意な関係が認められた。よって、介護期間が増すにつれ現状のPersonal strain項目の負担感の把握と軽減が、Role strain項目の介護負担感の軽減に関与し、ZBI総得点の減少を得られると考えられる。さらには介護者の継時的な体調管理も必要と考えられる。

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