著者
大森 明
出版者
愛知学院大学
雑誌
地域分析 : 愛知学院大学経営研究所々報 (ISSN:02859084)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.37-60, 2005-03-31

わが国では, 環境省による環境会計ガイドラインの公表以降, 外部環境会計の分野が急速に進展してきている。しかし, 開示された会計情報の有用性が課題とされている。本稿では, 特に, 環境コストをかけた成果としてのベネフィットないし効果の測定について検討する。環境会計における効果の測定は, 物量単位または貨幣単位によってなされるが, 環境コストが貨幣単位によって測定される以上, 理想的には環境効果もまた貨幣的に測定されるべきである。環境省ガイドラインでは, 効果の貨幣的測定や経済効果の測定に関して慎重な姿勢を崩していないが, 先進的な企業では, 積極的に効果の貨幣的測定に取り組んでいる。本稿では, これらの先行事例をレビューしつつ, 環境経済学の分野で進展してきている環境の経済評価法の環境会計への援用を検討する。その代表的な手法であり, また近年注目されているCVMやコンジョイント分析は, 信頼性や正確性の観点から, 貨幣的測定の手法としては今後の研究を待たねばならないと考えている。また, 環境会計は, 悪化した環境の改善, 換言すれば環境ストックの向上をもたらしているか否かを判断できるツールとなることを本来の任務とするべきである。しかし, 近年展開している環境会計はフローの側面のみを重視し, ストック面についてはあまり考慮されてこなかった。そこで, 本稿では, 汚染ストックの改善こそが環境コストをかけた成果であると捉える。具体的には, 維持コスト評価法を用いた予算を編成することによって, ストックの改善を明らかにできる仕組みとしての環境会計を提案することにしたい。

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