著者
雨宮 淳三 天本 広平 佐伯 拡三 姫木 学 岡本 嘉六
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.147-153, 1989-03-15

市販食肉(生食用馬肉, 鳥胸肉, 豚ロース肉, 豚挽肉)の細菌汚染状態を調査し, 以下の成績を得た.1.汚染の指標細菌として, 生菌数, 大腸菌群数, ブドウ球菌数, 嫌気性菌数, 低温細菌数を調べたところ, これらの指標細菌相互の相関係数は-0.31〜0.51であり, 関連性は薄く, それぞれ汚染の異なった側面を示すものと考えられた.豚挽肉はいずれの菌種についても菌数が多かったが, 馬肉, 豚ロース肉および鳥肉についても決して少ない菌数ではなかった.スライス肉相互の菌数の差は比較的小さく, 生食用馬肉では大腸菌群数と低温細菌数が少なかったものの, 他の菌数はほぼ同程度であった.このことは, 流通過程で食肉相互の汚染が交差し増大すること, 汚染菌数は食肉の種類によるよりも取扱いの適否に基ずくことを示すものと思われる.2.冷蔵保存した時の生菌数, 嫌気性菌数, 低温細菌数の推移は, 豚ロース肉が豚挽肉より進行が約半日遅いものの, 肉の形状による差異がないことから, 食肉の腐敗の進行は主として保存当初の汚染細菌によって決まるものと考えられる.嫌気性菌数は生菌数とほぼ同様の推移を示したが, 低温細菌はより速やかに増殖し腐敗に大きく関与しているものと考えられた.異臭発生時の菌数は, 生菌数と嫌気性菌数は約7.5,低温細菌数は約10であり, ついでネトの発生がみられた.3.分離した嫌気性菌のうち約半数が偏性嫌気性菌であり, API嫌気システムによる簡易同定ではCl.beijerinkiiが多くを占め, そのほかはFusobacterium symbiosum, Bacteroides spp.などであった.4.ブドウ球菌No.110培地で分離した368株のブドウ球菌の中で, 約30%がコアグラーゼ陽性であったが, コアグラーゼ活性の弱いものが大半であり, その中の55株がS.aureusと同定され, 3株がA型エンテロトキシンを産生した.MSEY培地とETGP培地におけるコアグラーゼ陽性株の性状を調べたところ, マンニット分解能および亜テルル酸塩還元能を有している株は, それぞれ, 76%, 95%であったが, 卵黄反応が陽性であったのはS.aureus株の27%に過ぎなかった.両培地とも, S.aureus集落の典型的性状として, 卵黄反応陽性をあげていることから, S.aureusの一部を見逃す危険性があると考えられる.また, コアグラーゼ反応の弱い株でもエンテロトキシンを産生していることから, 判定に際してはこの点を留意する必要がある.

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