- 著者
-
前川 義量
- 出版者
- 関西学院大学
- 雑誌
- KGPS review : Kwansei Gakuin policy studies review
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.89-112, 2006-03-15
少子高齢化、家族構造の変化、女性の社会的位置づけの変化、景気の低迷、財政難等々、高齢者福祉政策にとっては非常に厳しい言葉を耳にする機会が多くなっている。高齢者福祉を担う社会福祉法人では、これらの社会事象によって大きな変換の時期が訪れている。また同時に認知症高齢者ケアのあり方がいま問われている。厚生労働省の認知症介護最新情報ネットワークによると、現在わが国には150万人を超える認知症高齢者の方がおられると言われている。その人たちを受け入れる主要施設である特別養護老人ホーム(以降特養という)のあり方について注目が集まっている。その中で、今もっとも大きな変化の一つに新型施設(高齢者福祉施設のユニット型)といわれる個室化が挙げられる。新型への移行の意義として、プライバシーの確保、利用者の相互交流、及び居場所の提供による利用者のストレス低減などがあげられる。しかし、利用者への個別対応が必要性視されたことにより、介護者へのインパクトは大きい。本論文では、現場で働く介護職員にスポットをあて、その職場環境を分析していきたい。高齢社会を担う専門職として社会福祉士と介護福祉士が法制化され、その養成が始まって約17年になるが、彼等を取り巻く環境がこのように変化していく中で、彼等の社会的そして組織的な役割は大きく変化してきたものと考えられる。そこで彼等が今、どのように社会から認知されているか、どのような変化の中で、そしてどのような環境下で労働しているかを検証し、今後彼等のおかれる社会的、政策的環境を考え、彼等自身にとって必要な変化を明らかにしたい。