- 著者
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長谷川 勝久
- 出版者
- 九州女子大学・九州女子短期大学
- 雑誌
- 九州女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09162151)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.3, pp.51-66, 2006-02
本稿では、階層構造を持つ情報数学に関する学習課題において、一人ひとりの学習者が異なった情報を持ち寄って行うJigsaw学習に学習効果があることを示した。次に、学習中の言語記録簿をデータとして、そこで起きている学習者相互の会話の質を探った結果、以下のことが明らかになった。階層構造を持つ情報数学に関する学習課題を用いたJigsaw学習では、1階層構造の下位に位置する課題には学習効果が得られず、上位に位置する課題に学習効果が得られる。2自分が説明を担当する課題の成績と、他者から説明を受ける課題の成績との間には、統計的な有意差は見られない。3階層構造の下位、中位の課題において、説明者は、言い換え、メタファーなどを使って自分なりに再解釈を加えた深い思考を伴う説明の発話が多い。4階層構造の上位の課題において、説明を受ける者の質問は、単に内容や理由の説明を求めるだけではなく、自分の知りたいことを明確にし、資料にない内容についても、自分なりの仮説を持った質問の発話が多い。5質問に対する回答は、論拠を伴わない回答の発話頻度と、論拠を伴う回答の発話頻度に有意な差は見られない。6学習の進め方に関する発話は、質の高い相互交渉を引き起こすきっかけとなりうる。