著者
平塚 眞樹
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.391-402, 2006-12-29

OECDは、「対日経済審査報告書2006年版」で日本における格差と貧困の広がりを問題化したが、本稿はそこで要請された「質の高い教育への十分なアクセス」の保障とはなにを意味するのかを問うた。その際本稿では、移行期のシステムが分解する過程で台頭しつつあるポスト近代型能力観、その一つであるOECDによるキー・コンピテンシーと、社会関係資本との関連に着目した。複雑な行為のシステムとしてのコンピテンスの学習過程では、これまで以上に社会関係資本との関連性が強まり、その多寡が学習上の有利・不利に結びつくと考えられる。ところが少なくとも英国の調査研究によれば、近年の社会変容は一方でむしろ社会関係資本をめぐる格差を拡大しつつあるという。このジレンマに取り組むことが今日的課題と考えられる。マクロな政策レベル、教育現場・地域レベルでの政策的・実践的アプローチを通して、多様な社会関係資本の平等な形成を社会的に保障することが必要になるだろう。

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