著者
馬上 美知
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.420-430, 2006-12-29

本稿ではロールズ的な分配論とは異なる視点から格差問題にアプローチしているM.C.ヌスバウムのケイパビリティ・アプローチに着目する。そして「ケイパビリティ」概念を明らかにすることを通してこのアプローチを検討した結果、その可能性と課題が見出された。人間らしい機能への条件が整っている状態としての「ケイパビリティ」は、どのような「財」がどの程度必要とされているのかを明らかにすることができる。その際教育は機能を充足させることで「内的ケイパビリティ」を発達させ、かつ自己教育をすることによって当人をエンパワーメントし、「善き生」を保障する上で重要なものであった。ケイパビリティ・アプローチはロールズ的な分配論以上に実質的な「機会の平等」を保障しえる。しかしどの程度「ケイパビリティ」を保障するのか、その決定方法や子どもの時分に満たされるべき「機能」についてさらなる検討が必要とされる。

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