著者
八木 美保子 水原 克敏
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.444-456, 2006-12-29
被引用文献数
1

ニートやフリーターの増加といった若年就業問題が国家的課題とされ、学校教育にキャリア教育を求める声は強い。これは大学も例外ではなく、多くの大学でキャリア教育が導入されている。しかし、政策が一人歩きしている感は否めず、実態はこれまでの就職支援の強化に留まっている場合が多い。加えて、大学では多くの学生がカルト教団へ引き込まれたり、不本意入学による自己否定感を払拭できずにいたりなどの自己形成に関わる問題を抱えている。これに対処するためには、大学は新たな教育機能を整備することが求められているのである。「自分ゼミ」の実践を通して明らかになったのは自己形成に苦闘する学生の姿であった。ある学生達は自己肯定感が乏しく自己と対略することから逃避しがちであり、またある学生達は、内省及び他者との価値観の交流によって自己認識を深めようとするのである。そこで、筆者らは、「自分ゼミ」のような自己形成を基盤とするキャリア教育カリキュラムを、大学入学から卒業まで学生の発達段階に応じて設定するよう提案する。

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