著者
中嶋 芳也 小形 恵一 宍戸 寿雄 柴 伸弥 中川原 克彦 安保 佳一
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.278-286, 1992-10-30

異なる蒸煮条件下で処理したカラマツの第一胃内分解性(試験1),蒸煮処理カラマツ給与による第一胃内性状(試験2),第一胃内流出速度および消化管内滞留時間(試験3)をめん羊を用いて調べることによって蒸煮処理カラマツのもつ粗飼料効果をより明らかにしようとした。分解性の測定は,セルラーゼによるin vitro法とポリエチレン・バッグを用いたin situ法によった。in situ法では,得られた各培養時間の分解率をp = a + b (l-e^<-ct>)のモデルに当てはめて最大可能分解率(a + b)と分解速度(c)を測定した。測定試料には,蒸気圧3水準(10,12.5, 15kg/cm2,蒸煮時間20分),蒸煮時間4水準(5,10,15,20分,蒸気圧10kg/cm^2)で処理したカラマツと,対照として蒸気圧10kg/cm^2,蒸煮時間20分で処理したシラカンパを用いた。第一胃内性状は,15ks-/cm^2-15分で処理したカラマツ10%(W-10),20%(W-20)および30%(W-30)給与区と,対照として乾草30%(H-30)および70%(H-70)給与区を設けて調べた。また,第一胃内流出速度および消化管内滞留時間は,W-10,W-20およびW-30区と,対照としてH-70区について調べた。(1)処理条件の差異にかかわらず蒸煮カラマツの分解率はin vitroおよびin situのいずれにおいても未処理カラマツと比べて明らかな上昇は認められなかった。これとは対照的に,蒸煮シラカンパは,in vitro分解率46.6%,in situ最大可能分解率(a + b)80.6%および分解速度(c)1.5%/hを示し,著しい処理効果が認められた。(2)第一胃内性状では,飼料給与後6時間までの平均値で表したpHはW-30区で最も高い6.55で,H-30およびH-70のいずれの乾草区よりも高い値を示した。酢酸・プロピオン酸比はカラマツ区で2.03(W-20)-2.75(W-30)の範囲となり,W-30区はH-30区とH-70区の中間の値を示した。(3)カラマツ給与区の第一胃内滞留時間は,乾草H-70区の26時間よりも著しく長かった.カラマツの給与割合が増すにつれ滞留時間な短縮されたが,最も短い時間をを示したW-30でも約42時間であった。これとは逆に下部消化管内滞留時間は,給与割合の増加に伴って延長した。全消化管内平均滞留時間では,W-20区とW-30区が約103時間でW-10区よりも短く,しかし,乾草区の約55時間と比較すると約2倍の値を示した。(4)以上のことから,蒸煮処理カラマツは,現段階では,反芻家畜飼料の有効炭水化物源となり得ないが,30%程度の給与割合で粗飼料因子として十分な物理的効果を現わすことができるものと推察された。

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こんな論文どうですか? 蒸煮処理カラマツ給与によるめん羊の第一胃内性状,分解性および滞留時間(中嶋芳也ほか),1992 http://id.CiNii.jp/a3nZL

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