著者
渡辺 潔 高橋 佳孝
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.291-296, 1981-10-30
被引用文献数
1

刈取りの早晩が牧草無機成分の含有率と吸収量に及ぼす影響を明らかにするため,オーチャードグラスの2,3番草の再生に伴う無機成分含有率の推移を,追肥量を変えて週1回の間隔で各8週間追跡調査した。2番草と3番草への追肥量は,それぞれ多肥区ではN 0.8,P_2O_5 0.4,K_2O 0.7kg/a,中,少肥区ではその1/2と1/4にした。無機成分含有率は,刈取り追肥後の経時的変動が大きいが,3番草のP含有率を例外にすれば,追肥量による差は比較的小さく再生に伴って各区ともほぼ平行に変化した。すなわち,2,3番草のN,K,Mg含有率と2番草のP含有率は刈取追肥後1〜2週で高くその後は徐々に低下して約6週で最低になり,2,3番草のCa含有率は3〜4週で高い中高の推移になったが,3番草のP含有率だけは追肥量により異なる推移を示した。再生に伴う無機成分含有率の変化は,N(1.6〜5.1%)で大きく,K(2.2〜4.2%)でやや大きく,P(0.38〜0.51%)Ca(0.34〜0.47%)で小さく,Mg(0.23〜0.28%)でとくに小さくなった(数値は2番草と中肥区の例)。枯死部では,生体部より,N,P,K含有率は低いがCa含有率は高く,Mg含有率も高い場合が多くなった。生体部のN吸収量は平均生産力(乾物収量/再生期間)最大期すなわち刈取追肥後4〜5週で最大になり,生体部のP,K,Ca,Mg吸収量は約6週で最大になった。生体部のN含有率がほぼ最低になる刈取追肥後6週では平均生産力最大期に比較し,乾物収量は多いがN含有率が低いのでN吸収量はほとんど変らず,Nの乾物生産効率(乾物収量/N吸収量)は大巾に高まった。したがって,過繁茂になりにくい少,中肥条件では,平均生産力よりNの乾物生産効率を重視し,刈取追肥後約6週で刈り取るのが適切と考えられる。

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こんな論文どうですか? オーチャードグラスの再生に及ぼす追肥量の影響 : III.再生に伴う無機成分含有率の推移(渡辺潔ほか),1981 http://id.CiNii.jp/bID9L

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