著者
板倉 明子
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, 1988

原子的に充分均一かつ平坦な結晶表面に物理吸着した気体分子の系は,単分子層以下で擬似的に2次元の相として見ることができる.グラファイト表面上に物理吸着したKr,Xeなどの希ガスの系については圧力10^<-4>~0^0Torr,温度50K~100Kの範囲での相図が発表されている。しかし代表的な実験手段である吸着平衡圧力の測定による方法では,大きな面積の吸着下地が必要なため吸着媒がグラファイトなどに限られている.また電子線回折,電子分光法などの手段は測定に高真空が必要なため,気相の圧力が制限されるほか電子励起脱離の影響も無視できない.これらの実験的な制約から,現状では種々の系に対して異なる手法を用いており,それらの結果を直接比較することはできていない.偏光解析法は,測定を行う気相の圧力に制限がない,試料に与える影響が少ない,100分の1層程度の吸着にも敏感である,などの利点がある.偏光解析法を実験手段として用いることにより,種々の下地に対する物理吸着層のふるまいを広い圧力範囲にわたって直接比較することができる.本研究ではAg(111)面に吸着したXeの2次元の相図を偏光解析法によって求めようと試み,偏光解析系と試料ホルダー,クライオスタットから構成される真空実験装置を設計,製作した.試料汚染をさけるため装置の到達圧力は10^<-10>Torr以下とし,試料温度は20K~600Kまで連続的に可変,吸着等温線を求める20K~150Kの範囲では0.01Kの精度で制御できる.偏光解析の系は反射型のPCSA系で測定は手動消光による4Zone法,光源はHe-Neレーザ-(6328Å)を用いた.位相差(△)と振巾比(tanΨ)の測定精度は偏光子,検光子での消光位置の再現性から,それぞれ±0.1°,±0.15°である.△の変化量は吸着量にほぼ比例することがわかっているので,この装置で(相対的な)吸着量が測定できる.予備実験として吸着平衡圧と△とで求めた吸着等温線が,Xeの吸着層の2次元凝縮に起因する階段状のステップを示すことを確認した.

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こんな論文どうですか? 1.偏光解析法による希ガス吸着層の観察(学習院大学理学部自然科学研究科,修士論文題目・アブストラクト(1987年度)その1)(板倉 明子),1988 https://t.co/beCRlmBbfv 原子的に充分均一かつ平坦な…

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