著者
朝山 信司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A0630-A0630, 2008

【はじめに】Timed Up & Go(以下TUG)テストは、総合的なバランスを評価するパフォーマンステストとして用いられている。椅子から立ち上がり、前方の目標物まで歩いて回転して戻り、椅子に座るという複合的な動作に要する経過時間で評価されている。多様な要素を簡便に評価できるメリットは大きいが、一連の動作をまとめて評価しているために、それぞれの要因につての検討ができていない。そこで本研究では、このテストにおいて要素の違いにより動作を分け、それぞれにおいて健常者と脳卒中片麻痺者の違いについて検討した。<BR>【対象】脳血管障害による片麻痺者で、独歩にて室内歩行が可能な6名と50歳以上の健常者6名を対象とした。測定に関する指示理解に問題のある者は除外された。<BR>【方法】対象者には本研究の参加において、趣旨および内容について予め説明し同意を得た。TUG テストでは、椅子に座位をとり、「スタート」の合図にて立ち上がり、前方に歩き出し3メートル先に置かれた目標物を回って引き返し、椅子に戻って座るという一連の動作の経過時間を測定した。測定中の様子は側方にDVDカメラを設置して撮影し、測定後、動作を1) 立ち上がり期2) 往路歩行期 3) 回転期 4) 復路歩行期 5) 着座期 の5つの相に細分化し、それぞれの動作にかかった時間について映像をコマ送りして正確に導き出した。<BR>【結果】TUGテストにおける健常者の所要時間は 12.33±1.01秒、一方片麻痺者の所要時間は 15.51±2.52 秒で健常者よりも有意に長くかかっていた(p<0.05)。各相における比較をしたところ、回転期と着座期において片麻痺群が、健常者群より有意に長くかかっていた(p<0.05) 。立ち上がり期、往路歩行期、復路歩行期については片麻痺群が健常者群より時間が長くかかっていたものの有意差はみられなかった。<BR>【考察】本研究に参加した対象者は脳血管障害による片麻痺者であったものの、独歩による室内移動が可能な機能障害は軽い者であった。しかしTUGテストにおける所要時間において健常者よりも有意に長い時間がかかっていたことから総合的なバランス能力は低下していたと考えられる。動作の違いについて検討すると健常者と片麻痺者間で回転期と着座期に結果の有意な違いがみられた。この2つの動作はTUGの一連の流れの中でスピードを減速させて動きをコントロールする要素を含んでいる。一方それ以外の動作においては運動を開始して動きを加速する起立期や安定した移動を続ける往路と復路の歩行期には有意差はみられなかった。これらのことから片麻痺者では、減速して動きをコントロールする要素の強い動作において、その遂行の難易度が増したためにパフォーマンスが低下したのではないかと考えられる。よって片麻痺者は日常動作の中でも歩行時の方向変換や椅子に座るなどの減速しながら動きをコントロールするような動作により注意することが重要と考えられた。<BR><BR><BR>

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