著者
工藤 喜作
雑誌
目白大学人文学研究 = Mejiro journal of humanities (ISSN:13495186)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-13, 2006

ホッブズの『市民論』第15章、「自然による神の国について」(De Regno Dei per naturam)は、第3部「宗教」の最初の章であり、ここで彼は自然宗教について論じている。彼によれば、神の掟は二つのことば、一つは理性のことば、他は預言的なことばによって伝えられる。この二つのことばの相違によって、神の掟を通じて神の支配する国が、二つの国、自然的な国と預言的な国の二つに分かれる。このホッブズの二つの神の国に相当するものがスピノザにもある。つまり、神の掟が自然的光明によって啓示される国と預言的光明によって啓示される国であり、前者は自然的な神の法によって、また後者は預言的な神の法によって支配される国である。このかぎり理性や自然的光明によって神の掟が啓示される国は、外面的に見れば、ホッブズとスピノザにおいて全く同じであったといえる。しかしその内実に立ち入って、両者の二つの国を詳細に検討するならば、ホッブズとスピノザの自然的な神の国はまったく異なった性格をもつ国であることが判明する。以下この点について述べていこうと思う。先ずホッブズから始めよう。

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