- 著者
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田桑 眞男
- 出版者
- 京都府立医科大学
- 雑誌
- 京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.4, pp.D159-D172, 1929
肝臟ノ機能ハ廣汎且ツ複雑ニシテコレニ關スル業績亦日ニ月ニ發表セラルトイヘドモ、猶不明ノ領域多シ。特ニ近時學界興味ノ中心トナレル結合血糖ト肝臟機能ノ關係ニ就テハ知ルトコロ甚少シ。嘗テBierry或ハContiハ肝臟ハ結合血糖ヲ分解ストイヘルモ尚イマダヨリ深キ業績ニ接セザルヲ憾ム。果シテBierry等ノイフゴトクンバ肝臟機能障碍時ノ結合血糖量ハ増加シ葡萄糖支給ニヨル血糖關係亦正常ト異ルベキナリ。コヽヲ以テ著者ハ恩師飯塚教授指導ノ下ニ本研究ニ從事シ諸種肝臟疾患者ノ血糖特ニ結合血糖量ヲ檢シ、且ツ葡萄糖支給ニヨル血糖ノ消長ニ關スル臨床的觀察ヲ行ヘリ。而シテ著者ノ得タル成績次ノ如シ。(一)肝臟疾患者ノ遊離血糖量ハ一般ニ略々正常範圍ニアリ。(二)肝臟疾患者ノ結合血糖量ハ増加セリ、特ニ急性燐中毒及ビわいる氏病ニオイテ著明ナリ。(三)肝臟疾患者ニ葡萄糖(15-50g)ヲ支給セバ高度ノ過血糖ヲ招來シ、正常位復歸時間ハ遅延セリ。(四)健者ニ同量ノ葡萄糖ヲ支給セバ結合血糖量ハ初期減少シ後漸次正常位ニ復セントスル傾向ヲトル。(五)肝臟疾患者ニ同量ノ葡萄糖ヲ支給セバ疾患ノ種類及ビ病變ノ程度ニヨリ必ズシモ常ニ同一ナラザレド多クハ結合血糖一時増加シ後正常位ニ復ス。