- 著者
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玉置 辨吉
- 出版者
- 京都府立医科大学
- 雑誌
- 京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.4, pp.713-724, 1929
赤痢本型菌七日間肉汁培養濾液(生濾液)ト此ヲ攝氏百度ニ煮沸シツツアル重湯煎中ニテ三十分間加熱シタルモノ、即チ煮濾液トヲ牛血清ノ一定量ニ混和シテソレゾレ家兎耳靜脈内ヘ、唯ダ一回ニ注射シ注射後七日目ニ全採血ヲ行ヒテ得タル抗血清卜沈澱元タル牛血清トノ間ニ於ケル沈澱反應ヲ檢シ生成沈澱子量ヲ比較シタルニ、煮濾液ヲ加ヘタル方ハ生濾液ヲ加ヘタル方ヨリモ沈澱素含量顯著ニ大ナリキ。然シテ兩濾液〇・五竓宛ヲ注射シタル際ヨリモ一・〇竓宛ヲ注射シタル方ガ沈澱素産生ハヨリ大ナリキ。又煮濾液ハ對照タル肉汁ト其毒力略々同等ナリシニ拘ラズ、肉汁ヲ注射シタルヨリモ遙ニ強度ノ抗體産生ヲ來シタリ。即チ非細菌性蛋白體ヨリモ細菌性蛋白體ノ方ガ免疫的機轉ヲ強大ニ促進スルモノナルコトガ立證セラレタリ。以上ノ事實ニヨリテ非細菌性蛋白體ヨリモ細菌性蛋白體ノ方ガ凡テ一般ニ免疫的機轉ヲ促進シ、マタ細菌性生蛋白體中ニハ凡テノ免疫的機轉ヲ促進スル物質卜、之ヲ阻止スル物質(いむぺぢん)トノ二種ガ含有セラルルモノニシテ、此中ニテいむぺぢんハ煮沸熱ニヨリテ容易ニ非働性トナルニ拘ラズ免疫機轉促進物質ノ方ハ耐熱性強大ナルモノタルコトガ立證セラレタリ。以上ノ如キ立證ハ從來ハ喰菌作用、補體結合反應同名抗體ノ産生及ビ後天性特殊免疫ノ獲得等ニ就テ立證セラレタル所ナリシガ、非細菌性沈澱素ノ産生ニ際シテモ亦タ此ノいむぺぢん現象ノ立證セラレタルハ實ニ本報告ヲ以テ嚆矢トス。