- 著者
-
山岸 亜人
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.3, pp.237-247, 1971
イヌ卵巣の外来神経についてのオスュミウム酸染色と各種動物卵巣の鍍銀染色を行ない,神経組織学的にそれらを比較検討し,つぎの結果を得た。1.イヌ卵巣支配の外来神経には卵巣動脈神経叢から来るものと骨盤神経叢に由来するものとがある。神経線維の平均総数は前者で120本,後者で84本であった。また有髄線維の含まれる割合は前者では神経線維総数の29.2%であるのに対し後者ではわずかに3.6%過ぎ|なかった。一方無髄神経線維(交感神経性)は両方の神経系においてほぼ等量に含まれていた。2.血管をとりまきながら卵巣門から卵巣内に進入した神経線維束は次第に血管から離れ互いに分岐,交錯して髄質から皮質にかけて一次神経叢を形成する,この神経叢からさらに数本の自律神経線維と知覚神経線維が分かれ皮質stromaで細かい二次神経叢(autonomic aroundplexus)を作る。後者は髄質より皮質に豊富である。3.知覚性の神経線維がヒト(成人),ネコ,マウスに多く認められ,特に成人の皮質stromaではところどころ神経密度の高い部分があった。ヒト(胎児)の神経線維は成人と比べて走向は直線的であり,形態は単純で,知覚神経線維の形態形成が未完成の状態にあった。4.皮質stromaには拡散型分岐性終末,単純型分岐性終末,および小体様終末などの知覚終末が認められた。5.Autonomic groundplexusはヒト(胎児,成人),ネコの皮質stromaなどに認められたが,そのなかには自律神経線維ばかりでなく知覚神経線維も混じていた。またイヌ,ネコの皮質stromaにおけるautomic groudplexusのまわりにはinterstitial cellsの存在が顕著であった。6.ヒト(胎児)の原始卵胞の外膜,ネコ,マウスの二次卵胞,黄体の外膜外層に神経線維が認められたが量は少なく,卵胞,黄体との支配関係は明らかでなかった。7.卵巣内に神経細胞は証明できなかった。