著者
佐橋 由美
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-54, 2010-01

本研究の目的は,2006〜07年に開発に取り組んだレジャー志向性尺度(試作版,2006;改定版,2007)の安定性,実際場面での使用を想定した使い勝手のよさや現象解析力などの有効性について検討することであった。これまで学生を対象として,尺度の有効性を評価する作業を進めてきたが,本研究では,学生も含め20歳以上,70歳代までの幅広い年齢層の成人女性にまで対象を拡大して調査を実施し(N=228),志向性尺度の因子構造の安定性やレジャー現象を的確に解明しうる分析枠組みとしての効能(判別力)等,有効性の問題について検討した。さらに今回,志向性尺度を"旅行"という新たなレジャー文脈のニーズ把握や行動予測に応用することにより,尺度の新たな意義を探る試みも行った。32の志向性項目を因子分析した結果,先行研究と同じく(1)長期的展望・向上(2)活動性(3)主導性(4)対人関係志向(5)利他主義(6)自然志向の6つの因子が抽出され,下位尺度の内的一貫性も充分に高かった(α=.839〜.706)。続いて,下位尺度ごとの因子得点に基づいてクラスター分析を実施,全体をレジャー志向性に関して様々な特徴をもついくつかのグループに分類した後,グループ間でレジャー参加度,レジャー満足度,内発的動機づけ,好みの旅行スタイル,旅行に求める要素,旅行経験,全般的wellbeing指標等を比較していった。レジャー生活の充実度,生活全体の充実度,旅行等,どの生活局面に関する比較結果にも,最も積極的・活動的な行動傾向を示す「最適型」から→「高活動-対人関係志向型」→「自己啓発型」「低活動-対人関係依存型」→最後に最も消極的・非活動的な姿勢が特徴の「消極型」という順序で,得点・水準が低下していくパターンが認められた。一連の統計分析の結果は,レジャー志向性の考え方が個人のレジャー生活や,ひいては生活全般の充実の程度を予測するのに有効であることを示しており,これを定量化する志向性尺度は,レジャー教育や支援等の実践場面において,効果的に個人のレジャー生活の現状を評価するツールとしての可能性をもつことが示された。

言及状況

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こんな論文どうですか? レジャー志向性尺度の開発 : 成人女性サンプルによる尺度の有効性の検討と旅行行動への応用(佐橋由美),2010 http://id.CiNii.jp/f04PL

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