著者
行正 徹
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-42, 2010
参考文献数
10

量子力学にはその成立の時期から確率解釈や観測の問題という原理的な問題が付きまとっている。特に観測の問題は深刻であり、現在尚議論が尽きない状況である。量子力学的な状態は通常は因果的に時間発展するが、観測時のみ予測できない非因果的な変化をする。この変化を波束の収縮と呼んでいる。観測とは何か、観測時に何が起こっているのか、興味深い問題である。全ての現象に量子力学を適用できると考えると確率解釈とも絡んで、一種の自己撞着に陥る。一方、精神現象、特に「意識」の問題を科学的・学問的に考察する場合に原理的な問題が生じる。意識を考察するということは、そのこと自身、意識の働きであり、精神現象である。つまり、自己が自己自身を対象化し、考察することである。対象化した瞬間に別の意識状態に変わっているはずである。この意味では、意識以外の客観的なものを対象化して研究する他の諸科学とは根本的に性質を異にしている。ここには量子力学における観測の問題と同様の論理構造が存在する。

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