- 著者
-
伊佐 迪子
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.113-126, 2008-03-01
源家出身の二条院讃岐の歌には「出自」が大きく影響している。讃岐が歌を詠出する土壌について考察する必要から、伝記的・社会的背景の反映として讃岐歌を読み解く。若い頃の讃岐を「歌仙落書」が高く評価しているが、讃岐の人生は明らかではなかった。「玉葉」を詳細に検討した結果、かなり解明されたので伝記を背景に讃岐歌を読み解いていく。讃岐の生涯のうち、摂政・関白藤原兼実の秘書・「北政所」を勤めた社会的役割は大きい。摂政家の家経営の中枢にあって仕事に専念し、「沖の石の讃岐」として女流歌人の地位も確保しており、讃岐の果たした社会的役割と讃岐歌との関わりを考察する。讃岐は藤原兼実の支援を受けて、六十歳で歌壇に復帰した。「出自」「伝記的背景」「社会的背景」の三つの要素から、讃岐の詩的世界は構築されていると解釈する。