著者
宮内 哲
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.84, pp.69-76, 1991

本稿は,古来,諸民族が作ってきた多様な櫃(チェスト)のデザインの社会的側面を検討したものである。1櫃と財貨との結び付きは強く,櫃が金庫や基金を意味したり,お金を管理する空間や人の職能を指したり,さらには自由人という身分の象徴とされたことなどを指摘した。2婚礼の際,財産の分与として櫃を持参する習俗は多くの国でみられる。それらの櫃には,家族の豊かさや身分を反映するといった社会的機能の発現が強く認められる。結果,櫃のデザインを豪華簡素という階層的なものとしている。そして,櫃の数や豪華さが婚礼行列や儀式とともに重視された。3一般的には櫃は衰退した。とはいえ,相撲界や神社の祭祀では使用されつづけている。それは,櫃を担って運ぶパレードの社会的機能が,失われていないからだと考えられる。以上のように,櫃は社会的機能の大きな用具であり,実用的機能とのバランスの上に存立していることを指摘した。

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