著者
山本 健太
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.203-220, 2011-09-30

本研究は,静岡のプラモデル製造企業を取り上げ,各社資料および聞き取り調査の結果から,技術獲得の経緯および協力企業との分業構造の特性を示すことで,静岡市を中心とする当該産業企業の集積メカニズムを明らかにしたものである.プラモデル製造企業は,設立年や進出時期,技術獲得の経緯の違いから,転換企業,進出企業,新興企業に分類できる.また,これら企業の分業構造は,センター型(転換企業,新興企業)とネットワーク型(進出企業)に分類できる.センター型の分業構造のもとでは,金型や品質の管理が容易である.ネットワーク型の分業構造のもとでは,短時間での多種多量の製品の製造が可能である.また,自社と取引先のみならず,取引先企業間の近接性も求められる.いずれの分業構造の企業であっても,物流を伴う取引の多さから,近接性が求められている.さらに,プラモデル製造企業は,地元の取引先の多くと,企業設立以前から顔馴染みであったり,設立時から取引を継続していたりする.プラモデル製造企業の分業構造を支えているものは,顔の見える相手との信頼関係である.このような静岡に埋め込まれた取引関係もまた,静岡におけるプラモデル製造企業の集積を促している.

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