- 著者
-
平松 隆円
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 佛教大学教育学部学会紀要 (ISSN:13474782)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, pp.147-155, 2012-03-14
なぜ、若者は電車内などの公衆場面で化粧をおこなうのか。ある調査によると、10歳代の約40%は電車内での化粧に抵抗なく、約30%が実際に経験している。しかしながら、50歳代では約8.5%に抵抗がなく、実際の経験も6.5%と低下する。これは、社会や集団において個人が同調することを期待されている行動や判断の基準である規範意識に差があるからと仮説できる。また、従来からのアルコールや薬物に加え、近年では携帯電話などの依存性が社会問題化している。化粧と依存性との関係について、化粧そのものに気分の高揚感が存在することから、公衆場面で化粧行動をおこなう者は、ある程度の依存状態にあるのではないかと仮説できる。そこで本研究は、公衆場面における化粧行動と規範意識や依存性について検討をおこなった。結果を要約すると、以下の通りになる。1)実際の化粧行動は、『日常的化粧行動』と『非日常的化粧行動』に構造化され、公衆場面での化粧行動は『不特定他者場面』と『特定他者場面』に構造化された。そして、男性では『非日常的化粧行動』が『不特定他者場面』と、『非日常的化粧行動』が『特定他者場面』と有意な正の相関関係を、女性では『日常的化粧行動』が『特定他者場面』と、『非日常的化粧行動』が『不特定他者場面』と有意な正の相関を示すことがわかった。2)男女とも『不特定他者場面』『特定他者場面』のそれぞれを規範意識が有意に規定することはなかった。3)男性では『不特定他者場面』を情動的依存が負に有意に規定することが、女性では『不特定他者場面』を情動的依存が負に有意に規定することが、『特定他者場面』を情動的依存が正に有意に規定することがわかった