著者
長原 実
出版者
北方森林学会
雑誌
日本林學會北海道支部講演集
巻号頁・発行日
no.31, pp.1-3, 1983-03-20

家具の歴史をさかのぼろうとすれば,それはメソポタミアで,最古の文明をつくったとされるシュメール人達が,すでに粘土でつくった腰掛にすわっていたようであるから,紀元前3000年〜4000年までさかのぼることができるようである。木製家具が造られるようになったのは,かなり後になってからであるが,それでもローマ時代には権力の象徴としての玉座があり,庶民的生活用具として素朴な木製椅子が用いられていた,と考えられる。以来ロマニック,ゴシック,ルネサンス,バロック,そして華麗さにおいてその頂点といわれるロココスタイル,即ち16世紀から17世紀前半を界として次第にシンプルナイズされて来る。そして19世紀末にはモダニズムが台頭して来るといった具合に,家具はインテリアデザインと相まって何時の時代にも建築文化とともに歩んで来た,といえる。しかし,ここでは古典について長々と解説するつもりはない。今世紀,即ち近代家具が世界的にどのような動きを示したか,について私が1963年から67年までの家具研究のための滞欧生活,そしてその後十数年間家具製造業を営みながら,毎年数度の海外旅行によって得た経験から,世界の家具について特徴的活動を地域,あるいは人物によって追跡してみようと試みたものである。

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