著者
山本 一成
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.43-50, 2015-01-31

本論文は、保育者と子どもが経験世界を共有することが可能であるかという問いについて、自然実在論に基づく哲学から応えていこうとするものである。実在論の哲学と実践との関係は、知覚の問題に焦点を当てることで結ばれることとなる。本論では、ギブソンのアフォーダンス理論を自然実在論的に解釈することで、私たちが「そこにあるもの」に直接知覚するリアリティが、協働的に確証されるプロセスにあることについて論じる。私たちは「そこにあるもの」の実在を共有しつつ、異なる仕方でそれを経験している。共通の実在を手掛かりに異なる経験世界を共有していくことで、お互いの理解と変容が生じることとなる。以上の議論から、環境の意味と価値は共有可能である一方、多様で汲みつくせないことが導かれる。結論として、保育者は、子どもがそれぞれの仕方で知覚するアフォーダンスに注意を向けることによって、子どもの経験世界を探求することが可能になることについて論じる。

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