著者
恵木 徹待
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:13490850)
巻号頁・発行日
no.62, pp.123-138, 2016

第二次大戦において米英ソは決して「連合」などしていなかった。東欧ではソ連が優位であったし、日本占領においては米国の一国支配と言っても良かった。ただ、連合してはいない同盟というのはパワーで反発することなく、お互いに譲歩しながら自らの国益を求めていったのではないか。ソ連の北方領土支配というのはまさにソ連と米英との譲歩から生まれたと考えている。しかもそこにあったのはパワーや地政学とは別の、ソ連のアイデンティティーや民族意識というコンストラクティヴィズム的な発想だと考えるのが妥当である。東欧で支配を強めたソ連が一方で対日占領では米国に押され、その妥協として先の戦争に始まる対日感情の克服を達成したのが北方領土の支配であったのである。そこに目を向けずには我が国は今後の北方領土返還への戦略を見誤っていくであろう。

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