- 著者
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大橋 裕美
- 出版者
- 明治大学大学院
- 雑誌
- 文学研究論集 (ISSN:13409174)
- 巻号頁・発行日
- no.26, pp.333-350, 2006
『維新前後』は、「素人」の劇作家・岡本綺堂が初めて二代目左団次に書いた作品で、「白虎隊」と「奇兵隊」という二つの戯曲から成る。綺堂は「奇兵隊」で、「髪梳き」という歌舞伎や新派に頻出する劇作法を引用し、女方の市川莚若を配して左団次の「英雄」役を引立たせた。また「白虎隊」では、左団次がそれまでに手がけた、松居松葉作『袈裟と盛遠』や『ヴェニスの商人』等の作品をふまえ、「今迄の芝居には余り見掛けない」「老人」役を用意した。左団次はこれを、「従来の調子」を離れた台詞と動作で演じて成果をあげたが、この役は通常の「老役」を超えた、一人の老人」役として綺堂が造形したもので、同じ綺堂の『修禅寺物語』にもつながっている。