著者
福井 勇
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.5, pp.p301-307, 1976-12

近来徐々にではあるが,居合道を修練する者が増加していることは居合道を愛好する者にとっては大きな喜びである.現在居合道は一部の流派を除いては全日本剣道連盟組織内の一分野に位置づけらわているが,居合道と剣道とのスポーツ性等の関連やその違い等については,成書類には理論的に解明されていないので,所謂る剣道人の多くは居合道について確固とした理念に乏しく,中には明治時代以後強調された日本精神や武士道精神を基調とする考え方をしている者が多いのではないかと考える.筆者は居合道については,この練習のための筋肉連動は一般保健体育上から見たスポーツとは縁遠いように考えるし,またスポーツ性の有無の論よりも別な観点に立って居合道が芸術性と密着しているその性格を重大視している者である.このように述べて来ると剣道界の中から居合道が芸術であるとはそもそも論外であり,武道を冒演するものと厳しく反論される人が出ることも当然予想されるが,筆者としては甘んじて批判を受ける覚悟である.然しながら近代に普及させるためには論理に無理があってはならないと思うので,筆者は本文のように居合道と芸術性との結びつきについて論理的に考えてみたのである.但し本稿はすべて古流の居合道を対象にしており,明治時代以後新設された抜刀居合術についてはその時代の背景があるうえに実戦剣法としてこの道の練達者多人数によりそのさ形,を制定されたものと承知しているので,この居合術については理論的には全く別な観点から考えることが自然であり,本文の芸術性との密着についても異る性格であると考えているのでこの種居合術に関するものは除外して論述することにした.

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