著者
水田 昭夫
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.23, pp.p63-82, 1995-03
被引用文献数
1

本稿では、多彩な風土を展開する近畿地域について、都市を中心とする通勤圏と通学圏の近年における動向を明らかにするため、昭和45年から平成2年に至る5度の国勢調査の結果をもとに、予め設定した基準を満たす通勤・通学中心都市の選定を行ない、平成2年現在においては25の通勤中心都市とその5%超通勤圏域、37の通学中心都市とその10%超通学圏域をそれぞれ設定した。次いで、中心都市と、その通勤・通学圏域と、圏内各市町村から中心都市への通勤・通学者数とその比率の各々について、年次別変化の動向を考察した。これらの結果、通勤圏と通学圏の総面積は全域の72%とほぼ等しいが、一圏当りの平均面積には1.5倍近い差があって、通勤圏の規模がより大きい。圏域総人口は共に全域め97%を占め、平均規模もまた通勤圏が大きくなる。中心都市間でも、相対的にみて、大阪のように通勤中心性の高いもの、京都・神戸のように通学中心性の高いものなどと格差が大きく、相互の都市圏境域にも通勤と通学とで著しい差異がみられる。年次別変化の動向としては、中心都市の数は通勤中心で淘汰により低減、通学中心では多極分散化で増加し、圏域は通勤圏でやや拡大傾向にあり、通学圏では北・南部でやや拡大し、中部では変動が少ない。また、中心都市への通勤率は地元ではすべて低下、域内他市町村では大半で増大して中心地との連繋を強めているが、北大阪など事業所進出のさかんな一部の地域では低下した。通学率は地元、他市町村ともやや低下の傾向にあり、とくに多極分散化の進む中部でこの傾向が強い。調査の結果として、地理的な通勤圏と行政的な通学圏とは相互に全く異なった形状と動向を示すことが特徴的であった。

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