- 著者
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東原 英子
トウハラ ヒデコ
Hideko Touhara
- 雑誌
- 経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.21-35, 2007-02
連結会計情報開示制度の拡充により、2003年3月期決算以降わが国の会計制度は従来の個別決算あるいは親会社決算中心主義から連結決算中心主義へ移行した。このことは、会計制度自体の変化にとどまらず、企業経営自体の変化を意味していた。連結ベースでの企業評価が進展し、それを背景として従来の親会社中心の経営からグループ全体の経営効率を高めるグループ経営を必然とさせるからである。本稿では、グループ経営を評価するために、関西の私鉄3社を取り上げ個別情報からは得られない連結情報を用いた連結特有の分析の可能性を模索し、連結財務諸表およびセグメント情報の有用性を検証する。連結・個別情報に用いられる分析手法や計算自体には多くの共通点がある。しかし企業グループの分析において重視される視点、その分析結果が持つ経営的意味合いは、自ずと相違するはずであり、また、分析視点が異なれば、それ相応の分析アプローチも必要になる。私鉄3グループは、本来事業であり比較的安定している運輸業を中心に、流通業、レジャー・サービス業、不動産業等極めて類似した方向に事業展開している。分析の結果、3グループとも1990年代のバブル経済後の不良債権・資産の処理をすすめ事業の再編を推進し、2002年から2003年を境にひと頃の苦しい時期を脱して回復傾向にある状況が明らかになった。3グループは、不動産事業・レジャー・サービス事業を中心に事業の整理・再編を推進したが、グループ全体の中で各事業をどのように位置づけているのか、事業戦略の展開は各社異なっていることがセグメント情報から読み取ることができる。3グループは、構成比率が高い運輸事業の収益性改善に努める一方、事業の再編の結果、収益性が改善した不動事業のさらなる展開を図る等、個別情報では得られない各グループの事業戦略や今後の事業展開の方向性が明らかになり、連結情報とセグメント情報の有用性を確認した。さらにセグメント別の資本的支出や減価償却費のデータを用いた資源配分からの分析や株価を用いて、各グループの事業戦略やその結果である会計数値を市場がどのように評価しているのか等についても分析し、連結情報の分析の可能性とその有用性を検証することを今後の課題としたい。