著者
越智 郁乃
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.33-55, 2015-03-31

在日米軍施設が集中する沖縄県では、1961 年から2007 年までの間に軍用地利用から返還された土地が12 万ヘクタールにも上る。過密化する今日の沖縄本島中南部では、狭小な土地の有効活用のため返還跡地の開発が進められてきた。大規模商業地として開発が行われた地域では雇用が増大したが、商業偏重の開発とその後の経済や社会の持続可能性については疑義が呈されている。このように評価が分かれる跡地開発に対して、本稿ではかつての軍用地とその周辺地域を「接触領域」と捉え、今日までの特異な社会空間での地域の住民の経験、すなわち琉球王府、日本、米軍統治から日本復帰へというように次々と変わる支配者層および支配文化といかに相対し、いかに交渉してきたのかという長い道のりに注目する。具体的には、軍用跡地開発を経て誕生した那覇市新都心を事例に、そこでの住民の経験として沖縄戦前後、米軍による土地接収後の米軍住宅化やそれに伴う周辺地域での開発が、返還後の大規模再開発にいかなる影響を及ぼしているかということを明らかにし、単なる開発の評価だけではなく、その地に住まう人々にとっての軍用跡地開発の意義について考察する。

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