著者
山下 菜穂子
出版者
了德寺大学
雑誌
了徳寺大学研究紀要 = The bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.11, pp.97-115, 2017

本研究は本邦における男性同性愛者のHIV感染増加に関する心理的問題と性教育への課題を明らかとすることを研究目的とした.世界規模では日本のHIV感染者数,HIV新規感染者数ともごく少数である.しかし,その感染者数は男性同性愛者の性行為を中心に2000年~2011年にかけて増加傾向であるという問題を抱えている.同性愛者の精神健康度は異性愛者に比べ低い傾向であり,国内の男性同性愛者を対象とした研究では,同性愛者が精神健康度を良好に保つために教育機関における性教育の中で,同性愛についても肯定的な情報提供が必要だと報告している.しかし,教育機関での性教育は異性愛を前提として行われていることが現状であり,教育機関におけるその計画実施までに年月がかかるのは明白である.よって10代の男女に性教育を行っているNGOと男性同性愛者の地域ボランティア組織が連携し,セクシュアリティの考え方を見直す働きかけを行うこと,その活動内容を教育機関に発信し,同性愛者に対する問題とその対策をともに検討していくことが短期間で実現可能な方法である.

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