著者
古澤 伸晃 岡本 瑞穂 新里 知佳野 八木沢 誠
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 = Bulletin of Nippon Sport Science University (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.3035-3039, 2020-08

ABO血液型は日本ではごく一般的に受け入れられており,血液型性格診断や血液型占いなど娯楽にも用いられている。今日でもなお,血液型と人格は,スポーツの分野においても信じられており,インターネット上でも数多くヒットする。対峙する意見があり,結論に至っていない。本研究は,スポーツパフォーマンスと血液型の関係について,量的方法と文献を用いて考察するものである。私たちは,306名の武道(剣道,柔道,相撲)を専攻している学生を対象に,Web上でのアンケート調査を実施した。質問内容は,競技歴,競技成績,資格,そして血液型とした。回収率は,98.6%だった。血液型の分布は,A型116(38.4%),B型71(23.5%),O型84(27.8%),AB型26(8.6%),不明5(1.7%)であった。これは,日本人全体の血液型分布,A型37%,B型22%,O型32%,AB型9%の傾向と一致していた。このことは,武道種目に特化した血液型分布は存在しないことを示唆している。競技歴は95人が15年以上,169人が10年から15年未満,29人が5年から10年未満,9人が5年未満で,10年以上が全体の87.4%を占めている。10年以上を武道の熟練者とし,剣道,柔道,相撲の種目ごとと血液型を比較した。A型とO型の柔道の数値が同じではあったものの,分布は,A型,O型,B型,AB型の順に多く,この点についても,日本人の血液型分布と同じ傾向にあると言える。競技成績については,世界大会を含む全国大会以上(予選通過)と地方大会以下に区分し,血液型との関連を調べた。全国大会以上が最も多かったのはA型であるが,これはA型の競技者数が多いだけで,統計的な有意差はなかった。どの種目においても,全国大会出場以上の数が多いのは,この集団がもともと武道を専攻しているといった選択バイアスのためであると言える。つまり,武道系種目において,スポーツパフォーマンスと血液型には関係がないことが結論づけられた。血液型と人格については,擬似科学の分野でも説明されていて,それを信じる人もいる。血液型にまつわる研究はサイエンスとしては必須不可欠であるが,そのいっぽうで,いかに疑似科学を抑制するかの思考と方法論を見いだしていくかが今後の課題と言える。そして,スポーツにおいて最も重要なことは,日々のトレーニングとたゆまない努力と言えよう。

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