著者
新垣 裕治
出版者
名桜大学総合研究所
巻号頁・発行日
no.9, pp.21-31,

沖縄本島北部地域の"やんばる"には,ヤンバルクイナ,ノグチゲラ,ヤンパルテナガコガネなどの固有種を含め多くの種が生息している。沖縄島におけるマングース対策事業は1993年から行われているが,マングースの"やんばる"地域への分布拡大は防ぎきれていない。"やんばる"地域におけるマングースの連続分布北限は北上を続け,2003年には国頭村辺土名から安波ダムを結ぶ線まで到達したと予測されている。"やんばる"地域ではマングースの生息密度が低く,籠ワナ捕獲だけで分布域の全体像を把握することが困難であると考えられ,本調査では地域住民の目撃経験をアンケートで聞くことにより,マングース分布の現状把握を試みた。目撃数では東村が最も多く58件,次に大宜味村の26件で国頭村では12件であった。東村と大宜味村における目撃場所は村の南側で多かった。大宜味村の脊梁部では,大国林道沿いと脊梁部の西側の林道沿いでの目撃が多くなっていることより,分布は脊梁部を大国林道沿いに西側よりに広がっていると考えられる。国頭村では,県道2号線沿いで6件が目撃されており,これ以南では9件,より北側では3件であったことは,県道2号線が"やんばる"地域における連続分布北限であることを示唆している。目撃情報から推察すると,国頭村,大宜味村及び東村へのマングースの侵入時期は,2001-2002年と1989-1994年と考えられる。マングースの侵入時期前後の目撃件数(ヤンバルクイナは鳴声も含む)の変動より,マングースによる捕食の影響を受けていると思われる動物は,オキナワトカゲとヤンバルクイナであり,一方,ホルストガエル,アオカナヘビ,キノポリトカゲ及びミフウズラには影響が少ないと思われる。マングースの"やんばる"地域北側への分布拡大は,大国林道沿いに進んでいることが予測されるため,沖縄県が平成17年度に林道を遮断するように塩屋-福地ダムライン(SFライン)に沿った防護フェンスの設置を決定したことは,マングースの北上を阻止するのに有効に機能すると期待できる。しかし,SFラインより北においても既にマングースが生息していることは確かであり,フェンスの北側で徹底した捕獲作業を行う必要がある。また,国頭村内におけるマングースの分布から,県道2号線が連続分布北限と考えられるので,県道2号線沿いでも早急な対策を進める必要があると思われる。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? アンケート調査による沖縄本島北部3村(東村・大宜味村・国頭村)のマングース分布状況の推測(新垣 裕治), https://t.co/R0pHxk92Q8 沖縄本島北部地域の"やんばる"には,ヤンバルクイナ,ノグチゲラ,ヤンパ…

収集済み URL リスト